Title : Relative in vitro wood decay resistance of sapwood from landscape trees
of southern temperate regions.
Author : Baietto Manuela, and Wilson A. Dan
Journal : Hortscience, 45(3), pp.401-408
Year : 2010
この報文の背景から簡単に説明する。欧米の温帯地域の気候で生育している景観に寄与する樹木(landscape trees)について、どの樹種がきのこに影響を受けにくいかを調べるという観点からの研究である。
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そこで、landscape treesとして主要な9種類の樹木(広葉樹や針葉樹)と、12種類のきのこ(白色腐朽や褐色腐朽、幹朽ちや根朽ち)を組み合わせて、実験室にて同一の試験系で、木の重量減少を評価した。 すなわち、9×12=108種類の組み合わせの試験があり、期間は、1年間および2年間である。
樹木ときのこは次のものを用いている。
樹種
結論から先に述べると、コナラ属(ブナ科)およびトネリコ属(モクセイ科)で試験に用いた樹木は、きのこに侵されやすいとの結果であった。
アオダモは、トネリコ属の樹木であることから、きのこによる腐朽は十分に期待できると解釈できる。そうであれば、このアオダモがクワガタの産卵・飼育材となる可能性を秘めている。この結果は、現在進行中のアオダモ実験には心強い結果となった。
【試験方法】
昏睡状態の人々
被験体となる木は、生木を60℃で24時間乾燥させ、1.5×1.5×8.0cmの棒を切り取る。その棒を105℃で15時間乾燥させ、そこで乾燥重量を測定(処理前重量)する。次に棒状の木を滅菌するため、オートクレーブ処理(121℃、40分、15psi)をする。そして、きのこ菌の培養液に投入する前に、10分間蒸留水に浸して加水する。なお、きのこ菌の培養液は、麦芽エキス培地(Malt extract broth)で培養したものを用いる。きのこ菌培養液に棒状の木を入れたものは、暗所、21℃の恒温槽で温度管理し、1年間もしくは2年間培養(インキュベート)する。培養終了後は、棒状の木を取り出し、その木を水道水で洗浄し、目視で分る菌糸を取り除き、105℃で15時間乾燥させ、重量測定(処理後重量)をする。そこで、処理前後の乾燥重量を測定し、きのこ菌による木の重量減少を評価する。
【試験結果】
試験方法のとおり、実際の腐朽とは異なる木の腐朽であるため、題名には、in vitro と書かれているのだろう。
ポーラディーンうつ病
この報文は、108種類の組み合わせのデータが載っているが、ここでは省略する。そこで、このデータから加工された3種のデータを下に掲載した。
各きのこ菌から見た木材の重量減少性能
各樹種からみたきのこ菌による木材の重量減少性能
コナラ属やトネリコ属の結果の他にも面白いデータがある。例えば、きのこだけを見ても、白色腐朽菌と褐色腐朽菌は、クワガタ飼育では重要なポイントであるが、同じ"目"に属している。また、広葉樹と針葉樹の腐朽に関しては、同じ"属"でも違う特性がある。
また、針葉樹である⑧ヌマスギ属の木は、原報では報告されているが、ここではデータ掲載を省略はしたが、この樹は、針葉樹を腐朽させるきのこ菌だけではなく、広葉樹を腐朽させるきのこ菌にも重量減少の好成績を与えている。
基本的には、針葉樹には抗菌作用の物質が木材、樹皮にあるため、それに適用できるのが、針葉樹を腐朽させるきのこであって、このきのこは、広葉樹も腐朽させる能力はあるのだろうとこのデータは示唆していると思われる。
この結果の詳細な解釈は私はここでは書かない。皆さんで眺めて、いろいろ解釈してもらえればと思う。
【つぶやき】
話をクワガタ飼育ではなく、報文の学術性に目を向けてみる。この論文はScienceの観点ではいまいちと感じた。単に文章が長く、大げさに書いているだけのように思えた。また実験材料として、一つの幹から単にn=3で実験した結果に過ぎない。樹木は生き物であるため、一つの幹が、その木を代表する性質を持っているとは限らない。したがい、この結果は、定性的な傾向を読み取る程度とすることが妥当であろう。考察には触れられていなかったが、ここで用いたきのこは、幹や根を腐朽するものが用いられている。根圏ではきのこと共生関係にある樹種もあり、木がきのこを選ぶこともある。したがい、根腐朽菌と樹種の組み合わせの観点で結果を見ると、面白い傾向があるかも知れない。しかし私は、クワガタには関係ないので、解析は省略した。
また、このJournalのImpact factorを調べてみた。この数値は、どれだけ、このJournal掲載の文献が他の文献に引用されているかの指標であり、数値が高いほど、注目度の高い報告内容が多いことを意味する。そして、このJournalのImpact factorは、わずか0.7であった。これは、低すぎる値である。きっと、この報文は、別のJournalで拒絶されて、ここに流れて来たのであろう。
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