2012年5月30日水曜日

サーモスタット出力温度センサICの技術 | 掲載記事 | 半導体のローム ROHM


はじめに | 効果 | サーモスタットICへの要求事項 | 携帯機器向けサーモスタットICへの要求事項 | ラインアップ | 関連情報


はじめに

電子機器内において、電源回路やモータ回路、LED駆動回路など常に発熱を伴う回路では、温度をモニタし内部ファンにより冷却を行うが、システムの異常動作時や過負荷に対する温度保護は別経路で「サーモスタット出力温度センサIC」(以降「サーモスタットIC」と略す)が使われるようになってきている。また、昨今の携帯電話、デジタルカメラ、携帯音楽プレーヤ、携帯ゲーム機を代表とする携帯電子機器でも高機能化が進み、発熱源が増加している。なおかつ小型、薄型化が進んでいるため、放熱特性の確保がより困難になっている。よって電気回路内では安定した性能の維持のために、温度管理の重要性が高まっている。
一方で、これらの電子機器は、小型で電池駆動の機器が中心のため、温度検出デバイスに対しても、より小型で低電圧動作、低消費電流の要求が強くなっている。
この様な中、今回ロームは高精度なリファレンス電圧源を備えた温度検出ICを開発したので、その技術解説をする。


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サーモスタットIC搭載の効果

ノートPCでのサーマルマネジメントの例を図1に示す。図において、通常のサーマルマネジメントシステム(点線の最終温度保護システム部以外の部分)は発熱源であるCPUをリモートデジタル出力タイプの温度センサによりモニタし、温度上昇時にMPU経由にてファンを駆動して冷却するというシステムである。
しかし、この様なシステムの場合、CPU,MPUが異常動作に陥った時には前述の冷却システムが動作せず、セット内部で発熱し続けるケースもありえる。また最悪の場合にはセット内部での溶解、発火も考えられる。よって、図1中に示すように、サーモスタットICを用いた最終温度保護システムが必要となる。ポイントは、制御にCPUやMPUを介在しない独立したCPUフリーなシステムで、CPUやMPUが異常時でも安全に温度保護できる事である。このシステムの導入により、前述した異常時のセットの溶解、発火等を未然に防ぐ事が可能となる。


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サーモスタットICへの要求事項とロームの対応

検出温度精度
サーモスタットICは温度センサ出力と基準電圧の比較にて、所望の温度に達した時に出力端子OSより信号を出力する。検出温度精度としては、温度センサ出力の温度リニアリティが重要となってくる。この温度リニアリティに影響をおよぼす大きな要因としては、高温時では寄生リーク電流、低温時では電流源回路の特性変化による定電流性の変動である。ロームでは独自のアナログ回路技術を用い、両方をキャンセルする回路を導入しており、特にサーモスタットICで需要のある高温時のアナログ温度センサ出力の直線性を150℃まで維持することにより、温度精度±0.5℃を実現している。(図2参照)

検出温度切換え機能
セットでのサーモスタットICによる検出温度は、サーモスタットICの実装位置と熱源との距離、また筐体の放熱特性等様々なパラメータにより決定される。セットの開発途上では検出温度を変更する事が多く、サーモスタットICも検出温度の変更が必要となってしまう。 ロームではこれらのニーズに応え、検出温度を開発途上において切換える事が可能なBDExxxxGシリーズ(±5℃切換えタイプ)とBDFxxxxGシリーズ(±10℃範囲を2.5℃幅にて切換え可能なタイプ)をラインナップしている。これにより、セットの開発段階の評価にて検出温度に変更が生じても同一のサーモスタットICで対応可能となり、熱設計の自由度が大幅に向上する。また、セットの機種展開時などに±5℃程度の検出温度の変更であれば、同一の部品品番にて対応可能となるため、部品管理の共通化、管理コストの抑制に貢献できる。


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携帯機器向けサーモスタットICへの要求事項とロームの対応

携帯機器向けでの要求事項としては、小型化、低消費電流化である。携帯機器として特に代表される携帯電話では、セットの小型化、薄型化が進むに伴い、内部での放熱性能の確保が非常に難しい。さらには、多機能化に伴いアプリケーション回路が増加し、発熱源も増加している。この様な背景の中、携帯電話機器内では温度保護を積極的に行う箇所が増加している。具体的には、従来までのRF回路のPA部に加えて、CPU、LEDドライバ、システム電源、カメラモジュール、スピーカアンプ、チャージャー、電池パック等の部位において温度保護の必要性が高まっている。(図3参照)

これらの箇所に複数個サーモスタットICが搭載される事になるが、従来は以下の様な課題があった。
1.実装スペースに余裕が無い。
2.複数箇所サーモスタットICを使用すると消費電流がバッテリの駆動時間を短くする。
3.アプリケーション動作時のみ温度モニタが必要な場合、パワーダウン機能が必要。
よって、ロームではこれらのニーズを捉え、内部回路の最適化と携帯機器向けに特化した設計により
1.業界最小サイズ1.6×1.6×0.6mm(当社従来品比70%低減)
2.業界最小消費電流7.5μA(当社従来品比53%低減)
3.業界初のパワーダウン機能(パワーダウン電流0.3μA 1.5Vインタフェース電圧対応) を実現したサーモスタットIC「BDJxxxxHFVシリーズ」を開発した。
(写真1、表1参照)



「BDJxxxxHFVシリーズ」を用いた携帯電話でのアプリケーション例を図4に示す。常時動作していない機能ブロックの場合、常に温度モニタが必要ではないため、パワーダウン信号による制御によりサーモスタットICをOFFさせる。この様にして必要箇所のみ選択的にサーモスタットICを動作させる事により、セットにて複数箇所の温度モニタが必要な場合でも、低消費電流化を図る事が可能となる。



ラインアップ

ロームのサーモスタットICのラインアップを表1に示す。
検出温度切換えタイプとしては、小型パッケージ(2.8×2.9×1.25mm)を採用し、検出温度の切り替え幅で2シリーズラインアップしている。
センター温度を中心に±5℃の3段階切替可能な「BDExxxxGシリーズ」では、温度検出範囲-25〜120℃にて10℃ステップ毎にシリーズ機種として15機種をラインアップ。
また、センター温度を中心に±10℃幅を2.5℃ステップにて9段階切替え(センター温度の低温側4段階、高温側4段階)可能な「BDFxxxxGシリーズ」では、温度検出範囲-30〜130℃にて20℃ステップ毎にシリーズ機種として8機種ラインナップしている。
これにより、一般のサーモスタットではできない、細かい温度設定が可能となっている。
さらに、超小型パッケージ(1.6×1.6×0.6mm)を採用し携帯機器向けに最適な、温度センサICとして、世界最小サイズの「BDJxxxxHFV(パワーダウン時電流0.3μA、アナログ出力無効タイプ)シリーズ」、「BDHxxxxHFV(パワーダウン時電流3.5μA、アナログ出力有効タイプ)シリーズ」も揃えている。それぞれ温度検出範囲55〜90℃にて5℃ステップ毎にシリーズ機種として各8機種ラインアップしている。

ロームではサーモスタット出力温度センサICのみならず、アナログ出力温度センサICも含めて、さらに小型化、低消費電流化、高機能化を進めて、顧客ニーズに対応していく方針である。



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